有限会社杉野商店

スギノショウテン

[業種]大分類:製造業 中分類:その他 小分類:装身具・装飾品・ボタン・同関連品製造業(貴金属・宝石製を除く)

会社紹介 PICKUP特集

江戸つまみかんざしの技を次代に繋ぐすみだの髪飾りメーカー

伝統工芸を継承する髪飾りの企画、製造、販売

杉野商店は、「かんざし杉野」と称するように、かんざしなど髪飾りの製造、卸販売を行っている会社で、昭和23年(1948年) 創業という70年の歴史があります。扱う商品はつまみ細工かんざしやアートフラワー髪飾りから、鹿の子、バレッタ、カチューシャなどまで幅広く、商品企画からデザイン、製造、販売までの一貫した事業を行っています。
現在、かんざし杉野が提供する髪飾り品は、その大半が成人式、七五三を中心に晴れの日に着る和服に合わせて髪に付けられ、女性の髪を美しく引き立てています。その定番商品の1つであるつまみかんざしは、江戸つまみかんざしと呼ばれて江戸時代から女性に愛用されてきたもので、東京都の伝統工芸品にも指定されています。古くなった絹製着物の端切れを材料にして、小さく正方形に裁断した生地をつまんで折りたたみ、それを組み合わせて糊付けして花や蝶などのモチーフを鮮やかに表現する工芸品です。
同社の取締役会長である杉野邦煕(すぎのくにひろ)氏は、このつまみかんざし作りをはじめとした業績を讃えられて、平成30年に東京都功労者(産業振興功労)として都知事表彰を受けています。
同社が展開する髪飾りアイテム数は年間約650種に上ります。典型的な多品種、多柄、少量生産ですが、すべて手作りの製品であり、個性豊かでバラエティーに富んだ商品ラインアップを特長にしています。毎年新たに企画、デザインされた商品が加わり、新旧の商品がすべて1冊のカタログに写真付きで収録され、問屋さん、着物店、着物レンタル会社、写真館、アクセサリー店、小間物店に配布されています。このカタログによって全国から注文を受けることができ、短納期で小ロットからの出荷にも対応可能な体制を備えています。
いまでは同社自体でかんざしの製造作業を行うことはありませんが、こうした多数のアイテムの製品をラインアップするために、同社では各地の多くの職人工房や内職さんと契約して、伝統の技を生かした髪飾り製作を行っています。かんざし杉野は、つまみかんざしの伝統の技を継承しながら、現在のファッション性にマッチした商品の企画・デザインを提案し、手作りによる日本の髪飾りの価値を発信し続けています。



70年の歴史と市場に応える商品企画力

  • 伝統を継承する70年の歴史

    髪飾り作りを通じて、江戸時代からの伝統の技術を次の時代に残していくことを使命と考えています。70年の歴史を持つ企業の価値を大切にします。

  • 650種の製品をカタログ化

    4年前より、商品の写真を網羅したカタログを全国のお客様に配布しています。本年版の掲載商品アイテムは650点に及びます。

  • 新商品の企画・デザイン力

    市場のニーズに応えて新しい商品を企画し、独自のデザインによる髪飾りを作成して提案しています。伝統と最新のファッション性を融合しています。

時代のニーズに応える髪飾りをカタログにラインアップ

「かんざしを通して人々に感動を与える企業でありたいと考えています」
と同社の理念を語るのは代表取締役の杉野守氏。5年前の2013年、39歳で父から経営のバトンを引き継いだ同社の3代目です。同社では、この理念を実現していくために、商品のより良い価値の創造と、お客様、取引先、職人の方たちに誠実であることを約束するとしています。これを会社の基本姿勢として、髪飾りの企画、製造では時代のニーズを読み、お客様の期待を超える商品を提供することを目指しています。
新商品の企画を練るのは守氏と、弟で専務取締役の杉野彰氏、それに守氏の妻の聡子さんの3人。同社の経営を支えている3人です。聡子さんは、元はネイルアーティストでしたが結婚後にかんざし作りに触れてその魅力に惹かれ、つまみ細工をマスター。現在はつまみ細工作家としても活動し、社内一のモノづくり職人になっています。



「新しい価値のある企画やデザインは簡単には生まれません。頭の中のものを形にするのは途方もないことです。いつもあらゆる女性ものの売り場を見てはヒントを探しています」
と守氏は商品開発の苦労を述べます。
その新商品を発表する業界組合の展示会が年1回、4月に開催され、全国から髪飾りを扱う問屋、アクセサリーの流通、小売店の担当者が集まります。出展する業者は東京都内で7社、昔に比べればずいぶん減ったそうです。
「今お客様の中で勢いがあるのは着物レンタル会社や写真スタジオです」
と守氏は時代の流れを指摘します。商品への反応をみて、展示会が終わると同社では次の商品カタログの制作に入ります。650点という商品ラインアップを収録したカタログは他には見られないもので、守氏が社長になってから制作、配布を開始した大きな挑戦でした。今では同社の事業を支える販売チャネルとなっています。

かんざし作りを次代に繋ぐことが私の仕事

守氏ら3人にとって重要な作業が検品と包装です。特に包装作業では、1点ずつていねいに形を整え、そのまま店頭に置けるよう専用の透明ケースに入れて出荷します。
「命を吹き込む仕事です。見た目が勝負の商品ですから、ここで手をかけておかないといけません」
と守氏はパッケージングの大切さを強調します。こうして送り出した商品は守氏にとって特別なもので、
「成人式に向かう晴れ着の女性の髪に当社のかんざしを見つけると、我が子の晴れ舞台を見るような感動を覚えます」
と言います。そんな思い入れのある商品の強みというと、
「当社の大きな強みはバラエティーに富んだ品揃えが可能なことです。それも、オリジナルパーツを組み合わせて他にないものを作っています。すべて機械を使わない手作りですが、そこに当社が続けられている理由があると思います」
と守氏は胸を張ります。しかし、その製造を担う職人さんが減っていることが問題だとも語ります。



「地方の職人さんにも仕事をお願いしていますが、高齢化が進んでいて、都内で契約している職人さんもわずかになりました。すみだで3代続いた職人の方も3年前に亡くなっています」(守氏)
職人の減少は業界全体の問題となっていて、今後いかに若い人に技術を伝えていくかは大きな課題です。外国人労働者に技術を教えていくことも、今後は視野に入れないといけないと守氏は考えています。
一方で、子供や若い年齢層の減少によって、七五三や成人式での髪飾りの需要も減少していきます。これをカバーする新しい市場の開拓も課題となっています。
「外国人観光客のおみやげ品としての商品開発には大きな可能性があると思います。集客力のあるスカイツリーが近い向島には地の利もあります。そこを活かしていきたいと考えています」
と将来の展開に考えを巡らす守氏にとって、かんざし作りを次代に残すことは、自らに託された使命となっているようです。
「私は家業を継ぐことが当たり前で育ちました。今はこれしかないと思っています。残していくことが私の仕事です。先代、先々代の想いを繋いでいかないといけません」
と守氏は決意を固めています。和以創楽・・・創業者の想いを酌んで造語したこの銘を胸に、和をもってものづくりを楽しむことでその仕事を続けていこうと決めています。

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