根岸産業有限会社

ネギシサンギョウ

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盆栽のための銅如雨露で世界とつながる町工場

シンプルで使いやすく、永く愛される銅製如雨露を一途に

根岸産業は、国内でも珍しい(多分ほかにはない)如雨露の専門メーカーです。メイン製品は盆栽用の銅製如雨露という絞り込んだ製作活動をしているので、メーカーというよりは工房といった方がしっくりきます。
この銅如雨露は、水が6リットル入るものなら竿が80㎝を超えるほど長いのが特徴。その全体フォルムを、新品時の磨き上げられた銅の色で見るとまるで芸術品です。以前から専門家の間では盆栽の水やりに最適な如雨露という評価を得ていたのですが、近年の世界的なBONSAIブームの中で世界の盆栽愛好家の間でも評判になり、注文に製造が追いつかない状態が続いています。
製造は、すべての工程が手作りであり、それを根岸洋一氏がほぼ一人で行っています。水注入口のゴミ除け網取り付けなど、わずかな手伝いも母の絹江さんだけ。ただ一人の職人技が支える如雨露づくりなのです。
同社の創業は1944年(昭和19年)。初代は元神社仏閣の銅葺き屋根職人だったそうで、おそらく戦争で仕事がなくなったために、家庭用金物の製造・修理業を始めたということだったのでしょう。やがて二代目が園芸用如雨露に着目し、その後材料をトタンから銅に替え、初代の銅葺き技術を応用して如雨露を開発したことが現在の事業の礎となりました。これを盆栽の専門家に提案し、使ってもらうなかで改良を重ね、盆栽用如雨露という独自製品に育てたのです。
銅如雨露が高く評価されている要因は、この改良の結果盆栽に適した散水を実現できたことにあります。しっかりとした大き目の貯水部、長い水管と取り付け角度、そして研究の末に行きついたハス口。その組み合わせが、土を掘り起こさず苔を傷めない、自然に降る小雨に近い優しい散水を可能にしました。あるTV局のハイスピードカメラを使った分析で、それが確認されたそうです。ちなみに、ハス口の穴は、径が内側から外側に向けてわずかに絞られていて、その水圧変化が“小雨”を実現しているようです。
また同社は、如雨露の製造だけでなく、どんな修理にも対応することでユーザーに知られています。30年前に二代目が造った如雨露が水漏れで帰ってきて、洋一氏が修理して現場に戻してあげるということが自然に行われているのです。
シンプルで使いやすくて、見た目もきれいで永く使える。三代目根岸洋一氏が創り出す銅製如雨露は、すみだ地域ブランドである「すみだモダン」にも認証されて、すみだの職人技を世界に発信しています。



伝統の銅板加工技術を如雨露づくりに活かす

  • 盆栽用如雨露メーカー

    盆栽に最適な水やりができる銅製如雨露を製造しています。ユーザーのご意見と長年の研究で現在の構成・形状に到達し、さらに改良を続けています。

  • 世界に市場を拡大

    盆栽愛好家は世界に広がっていて、同社の製品もドイツ、イタリア、フランス、オランダ、スペイン、チェコ、イギリス、ロシア、オーストラリア、アメリカ、南アフリカとアジア各国に輸出されています。

  • 商品開発コラボレーション

    同社では新たな展開としてインテリア分野での商品開発に、墨田区の事業に参加して早稲田大学のゼミ、デザイナーとコラボレーションしながら挑戦中です。

1つ1つすべての工程を一人で手作りする

根岸産業には、寺社の銅葺き屋根の技術を元にする先々代からの銅板加工技術が息づいています。ただし銅製如雨露は伝統工芸品ではなく同社の自社開発製品。その事業を受け継いだ3代目の根岸洋一氏は、大学を出て10数年システムエンジニアとして働いた経歴を持っています。社長になってからは厳しい時も経験しましたが、銅職人の目とSEの目で、銅如雨露の改良と販売促進に挑戦し続けています。
「1960年代に父(先代)がブリキの如雨露に替えて銅製の如雨露を作って盆栽協会などに利用を提案し、大御所といわれる盆栽の先生に使ってもらったことで盆栽用如雨露として認知されるようになりました。祖父の代から銅を使っていたので、その技術を受け継いだ結果でした」(洋一氏)
盆栽用の銅如雨露には、使いやすさを目指した様々な工夫の跡が見られます。例えば、持ち上げる時の持ち手は、胴体の後ろ側に付いています。これは、盆栽の水やりには水道水ではなく雨水を使うことが多いため。雨水を貯めた瓶に直接如雨露の胴を突っ込んで水を汲めるように、大きな出っ張りをなくしたのです。水の注入口も大きくするとともに、ゴミが入らないよう細かい金網の蓋(こし網)をつけてあります。



また、1つの如雨露の部品点数は20点ほどですが、主要部品はすべて手作業のハンダ付けで取り付けを行っています。これには、製品になっても熱してハンダを溶かせば部品が容易に取り外せ、修理をする際に便利だからという理由があります。そのハンダ付けには電気ごてでなく、斧のような金属片が付いたコテを七輪のコークスで熱して使います。水の重みでハンダが取れることがないよう、ハンダ付けには高度な技能が必要で、温度の見極めやコテの使い方には熟練が求められます。
まったくの手作り、しかも作業は洋一氏一人。1週間日替わりで工程を進め、1日換算の製造数は4~5台程度ですが、今のところこのペースを変えるつもりはありません。

すみだの町工場が世界の盆栽愛好家とつながっていく

「学生がアイディアを出して新商品を検討したり、販売促進戦略を考えたり、SNSを活用した情報発信を計画したりしています。私が40代、学生が20代、一緒に考えることで新しい方向が見えてきます」
と洋一氏が語るように、現在同社は墨田区の事業に参加して早稲田大学のゼミとの連携活動を進めています。
昨年(2017年)はさいたま市で4年に1度の「世界盆栽大会」が開かれ、世界中から盆栽愛好家が押し寄せたこともあって、TV、雑誌などで特集が組まれ、銅如雨露が知られる機会も増えました。盆栽は今や世界の「BONSAI」となっています。
同社も2017年2月には、フランクフルトで開催されたインテリア・生活用品の最大級の国際展示会「アンビエント2016」に出展し、2016年のトレンド商品に選ばれました。
「今も如雨露製品は毎年新しくなっています。ユーザーから壊れやすいところ弱いところのご意見がきますので、そこを改良し続けているのですが、10年経つと全然違う製品になっていることがわかります」
と洋一氏は、今日の加工の出来栄えを確認しながら話します。足踏みカシメ機をはじめ70年前からのごっつい鉄製の加工機が、床板がギシギシ鳴る木造工場のあちこちで現役を続ける中で、世界のBONSAI愛好家が待つ銅如雨露が産み出される楽しさ。でも、その如雨露にはどこにも根岸のロゴが入っていません。
「ロゴは付けないです。付ければそこで完成してしまう気がして…」(洋一氏)
ユーザーの使いやすさのために変わり続ける如雨露づくりであること、それが洋一氏の身上であるようです。

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