株式会社野口ポンプ製作所

ノグチポンプセイサクショ

[業種]大分類:製造業 中分類:輸送用機械器具製造業 小分類:自動車・同附属品製造業

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消防ポンプ自動車づくり一筋の、知られざる名町工場

創業100年を迎える消防ポンプ自動車の専業メーカー

野口ポンプ製作所は、大正7年(1918年)創業という消防ポンプ自動車の専業メーカーです。創業当時は、人が引っ張って移動する手押しポンプ式の放水車を製造していたそうですが、現在のようなエンジンで動く消防ポンプ自動車は昭和20年代後半からのもので、同社もその頃から消防ポンプ自動車を製造してきました。
同社は消防ポンプ自動車メーカーですが、正確には、シャシ(シャーシとも言います)の上に各種消防車に必要な装備とボディを組み付ける“艤装メーカー”といいます。シャシとはエンジンなどの走行の基本機構とキャブ(乗員室)が付いたフレームで、こちらはトラックメーカーが製造します。
同社では、鉄の配管のかたまりのようなポンプを開発から製造、据付と一貫して行います。消防本部など発注元の要求仕様に基づいて、このオリジナルポンプを製造し、電子式かマニュアル式の制御機器を取り付け、ボディ側板で覆います。このボディにはポンプ操作盤、ホース、ノズル、はしごのほか様々な器具が取り付けられますが、その使いやすいレイアウト設計も工夫のしどころです。ボディの板金加工は外部メーカーが担当しますが、取り付ける器具の一部は同社が製造しています。
ボディの組み付けが終わると消防車お決まりの赤色の塗装工程なのですが、これは近県の協力工場で行うため、一旦すべて分解して搬出。塗装が終わって戻ってきたら再度組立です。その後、千葉市にある同社千葉工場に移して社内試験を行い、第三者機関による公的な検定を受け合格すれば晴れて出荷、車検登録をして納品になります。
同社では消防ポンプ自動車以外にも、数は少ないですが高所救助車や高圧空気充填車などの特殊車両も製造します。高圧空気充填車とは、消防士が現場で装着する空気呼吸器のボンベに圧縮空気を詰めるための車両です。こうした消防車を同社では年に12~13台ほど製造します。納入先は関東圏の市町村と特別区の消防本部、もちろん入札による受注生産です。同社のような消防ポンプ自動車の艤装メーカーは、大手から小規模企業まで全国に12~13社くらいあるそうですが、東京23区内では同社1社だけです。



自社技術を育て消防車ニーズにこたえる

  • 消防用ポンプを自社製造

    消防ポンプ自動車の要となる放水のためのポンプを自社開発、製造しています。最近では軽量化したポンプを開発しました。

  • 23区唯一の艤装メーカー

    ポンプをはじめ消防車に必要な装置、装備、ボディをシャシに組み付ける艤装メーカーです。東京23区内では同社ただ1社です。

  • 大正7年からの歴史と実績

    大正7年(1918年)創業で、手押しポンプの時代から消防ポンプ、消防ポンプ自動車の製造を一貫して行ってきた歴史と実績があります。

年間12~13台製造の消防車1台1台に工夫がある

「忙しくなると、工場内に製造中の車を一列に並べて次々に工程を進めるのです。社員は溶接も組みつけもと1人何役もこなしています」
歴史を感じさせる工場に立ってそう話すのは、社長の野口和秀氏です。大学を卒業した後、鳥取にある同業メーカーで2年間、工程管理の仕事を経験してから野口ポンプ製作所に入社しました。以来、40年近くもっぱら営業担当として各地の消防本部を訪問して情報収集、商談、打ち合わせにあたってきました。
「思い出の残る仕事としては、救助作業にも使えるオリジナルな高所作業車を売り込んで受注に成功したことがあります。当社が設計したのですが、高さ15メートルでの作業ができ、車椅子を載せて地面に降ろすことが可能で、4台ほど製造して納入しました。非常に好評をいただいていたのですが、直後に改正された安全基準に適合できない部分があって、オリジナル車の製造は断念せざるを得ませんでした」
と野口氏は残念そうに語りますが、この仕事はそうした自分たちのアイディアや工夫が生かせる面があって面白いとも言います。



「こうしたい、あれが欲しいという消防車への要望を聞いて、社内で考えて工夫して作ったものが、使い勝手がいい、レイアウトがいいと評価されるとうれしいものです。大手ではできないような細かい対応がすぐできるのが当社の強みだと思います」(野口氏)
そして、そんな消防車づくりには「社会的な貢献も感じることができる」と野口氏は笑顔でうなずきます。

社会貢献できる消防車づくりをまだまだ続けていく

現在社員は総勢で11名。うち1名は、昨年(2016年)の夏にハローワークに求人を出し、説明会にも参加して熱弁をふるって獲得した若手です。
「知ってもらう機会がなかなかない仕事で人の採用も難しいのですが、説明を聞いて消防車を作ってみたいと言ってもらえたので喜んでいます」
と野口氏は顔をほころばせます。ただ今後については気を引き締めています。
「人口も減少しますし、市町村はどこも財政が厳しい状況です。それに今の消防車は20年くらい使いますから、以前に比べて交換時期は長くなっています。できる限りきめ細かくニーズにこたえて受注を確保し、アイディアを活かして喜ばれるもの作りをしていくことを目指します」(野口氏)
後継者については、現在違う分野の会社に勤務している息子さんに期待しているとのことです。来年は創業100年という同社。昨年(2016年)春の褒章では、野口氏が永年の消防機器への貢献により黄綬褒章を受章しましたが、まだまだ消防ポンプ車づくりの道を歩き続けていくつもりです。

動画で見る「野口ポンプ製作所」

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