電子機器、医療機器の精密部品メーカー

高埜製作所は、小物の精密挽物切削加工を得意とする、電子機器等の精密部品の加工・組立メーカーです。創業は1953年と古く、60年を超える歩みの中で、トップクラスの腕を持つ挽物屋の評価を築いてきました。主力の製造品は時代の流れとともに、電子ライターの部品から、家庭用ゲーム機、携帯電話の部品へといった変遷をしてきて、現在は医療機器の部品が製品の中心となっています。
この医療機器とは、診療所にある各種治療器具や配管、各種台、テーブルなどの一連の装置のことです。同社は、これらの機器に必要なバルブユニット、エアスイッチ、配管ジョイント、フィルターなどをはじめとした多様な精密部品の製造・組立を行っています。高い加工精度が求められる部品が多く、要求公差が2～3マイクロメートルになることもあります。
元々は精密加工の受注のみでしたが、機器メーカー側の要望もあって、加工した部品に他の微細部品を装着して小さなモジュール部品に組み立てるといった、2次加工的な組立工程まで範囲を広げています。それに伴って、自社ではできない加工も含めて一括で受注し、協力工場や外部の職人の力を借りて1つの部品に仕上げる体制ができています。
また、同社ではこの医療機器以外でも、長くガスメーターの部品製造を行ってきているほか、電子機器部品の精密加工を多く手掛けています。

時代を映すヒット製品に部品を提供してきた

「いつも運が良かったですね。1つの製品の仕事が下降すると、タイミング良く次の製品の仕事が紹介で入って来ました」
と社長の高埜雅信氏が、自社のこれまでの歩みを振り返って話します。
先代社長の父親が創業した高埜製作所は、電子ライターの部品やターボライターの部品の製造で発展しました。しかし、やがてライター部品は下降の一途。さてどうするか、という時に紹介されたのが、家庭用ゲーム機メーカーが精密軸受の製造会社を探しているという話でした。10社の応募があった中で、ただ1社加工精度の高さを認められて受注が決定。このゲーム機がブレイクして受注は急拡大したのですが、その後生産の海外シフトで部品製造も急減します。代わって同社を支えたのが、ヒット商品となったポケットベルのバイブレータ用偏心モータの軸受製造でした。その後も、別のヒットゲーム機の部品、携帯電話端末のアンテナと、常に時代の流れに乗った製品の部品を手掛けてきて、その後現在の「医療機器の部品へとバトンタッチ」(高埜社長)したという歴史があるのです。
こうした製品の変遷とともに同社の精密加工技術が磨かれ、その評価が新たな紹介先を呼んできたと言えそうです。



「当社のホームページを見てお問い合わせいただいた大手メーカーの開発担当者から、防衛省に収める新しいパラボラアンテナの精密部品の試作を依頼され、3カ月かけて作り上げたこともあります」
と高埜氏は自社の技術に自信をみせます。

弟、長男とのトリオで次の展開を狙う

「高埜社長は学生の頃から工場を手伝い、ずっと機械を操って精密加工のレベルアップを図ってきました。社長となって以降も変わらずに自らNC旋盤を操作しています。 「大事なのは精度です。公差を守って不良を出さないこと。機械は始動後しばらく精度が安定しないので、元旦以外は止めずに24時間動かしています。ロスが少なくなる分、その方が結果的に効率もいいのです。ゲーム機の部品をやっていた時に覚えたことです」 信頼の品質、満足の価格、安心の納期。それが先代社長の時代から堅持してきた同社の理念です。現在同社は弟さんが品質管理担当、息子さんが組立担当で、加工担当の社長との3人柱で支えています。 「今は注文にやっと追いついているところなので、仕事を広げていくには若い人を入れないといけません。それがいちばん課題です」 と高埜社長は、さらにハイレベルな精密加工への挑戦に意欲を燃やしています。

動画で見る「有限会社高埜製作所」