株式会社桑名製作所

クワナセイサクショ

[業種]大分類:製造業 中分類:金属製品製造業 小分類:ボルト・ナット・リベット・小ねじ・木ねじ等製造業

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50年前の機械を使い続け、海外にも負けないナット専門メーカー

黄銅六角ナット一筋というニッチ分野メーカー

桑名製作所は、ねじ業界でも珍しい、切削加工で製造する黄銅六角ナットの専門メーカーです。注文があれば、埋め込み式のインサートナットや特殊ナット、その他精密挽物(切削加工品)を造ることもありますが、製品の90%以上は六角ナットという専門メーカーなのです。しかも、ナットは冷間鍛造での生産がほとんどという中で、同社は切削加工での製造。NC旋盤も保有していますが、50年来使い込まれた32台のカム式自動旋盤による製造にこだわっています。ナットを切削で造るメーカーはごく少数だそうですが、そのうえカム式旋盤専門となると国内に数社しかないそうです。
製造可能な六角ナットの寸法は径が2.5φ~36φ、ピッチはM1~M30です。JIS規格品の製造も受けますが、製品の80%は規格外の図面からの製造で、カム式自動旋盤、自動穴面取り(角端切削)機、タッピング(ねじ加工)マシンの3工程による高品質・短納期製造を売りものにしています。この図面による特注品を早く低コストで造れることのヒミツが、カム式自動旋盤の活用にあります。
カム式自動旋盤は、主軸にセットされた棒状材料に向けて、横方向あるいは正面からカムに押し出された刃物が切削を行う加工機です。カムと刃物の形を変えて組み合わせることで複数の工程を1台で行うこともでき、長い棒材を自動送りしながら連続加工できるので、一度セッティングすれば高効率な加工ができるのです。NC工作機のようにプログラム作成や設定といった準備作業に時間を取られず、短時間で加工が開始でき、1日で1万個程度までなら製造可能です。しかも、機械はすでに償却が終了している。これが、短納期低コストでの製造を支え、海外での製造に対しても十分に競争力を発揮できているのです。
「街中を運転するのに何もF1を使うことはありません。当社も複雑な加工はNC工作機でやりますが、そこまでの精度が必要ないものは古い機械でもできます。需要はありますし、競争がないので続けていけるのです」
と同社の専務取締役、桑名寿幸氏が言います。

使い続けた設備を活かし短納期低コストを実現

  • 黄銅六角ナット専門

    1949年創業の黄銅(真ちゅう)六角ナットの専門メーカーです。ISO規格、図面を問わず、ねじ径2.5mm~36mm、ねじピッチM1~M30に対応します。

  • 短納期低コストで提供

    図面から製造する特注品を短納期、低コストで納入できます。見積り内容は、材料費、工賃から切り粉の下取り価格まで全てオープンにしています。

  • カム式自動旋盤と職人技

    昔ながらのカム式自動旋盤を職人がていねいにメンテナンスしながら使いこなし、精密な切削加工によるナット製造を行います。

古いカム式自動旋盤の価値を最大限引き出す

「じつを言うと、この会社に入った当初は、カム式をやめて全てNCに代えようと思っていたのです。でも、あるお客様から止められて、カムを続ける方がいいと説得されました。それで古い機械の勉強を始めたのですが、結局それでよかったのだと思います」
と専務の桑名氏は10数年前のことを振り返ります。大学を卒業してしばらく会社勤めをした後、会社を継ぐつもりでNCマシンを使う金属加工業で3年間修業し、桑名製作所に入りました。
工場を始めたのは祖父で、近くに精工舎の工場もあったこともあって精密な部品加工を行い、そのうちナット専門になりました。その先代社長が25年前に亡くなり、代わって父の正之氏が社長に就いて現在に至っています。



「カム式の古い機械を今も使っているところは多いのですが、大事なのは技術というよりは機械との付き合い方ですね。締めると緩める、その具合の感覚を身に付けることです。主軸は2000回転くらいで遅いのですが、刃物の送りは速いため、刃先の形状を上手く調整しないと製品になりません。また、穴あけにしてもドリルの切れ味が良すぎると切り粉がクルクル巻いてしまうので、研磨にひと工夫必要です。」
加工後の製品は切り粉と一緒に落ちるので、切り粉が細かくないと編みカゴでふるい分けができず効率が悪くなるのです。さらに、すでに生産終了から時間が経った機械ですから修理も大変です。
「溶接でも何でも自分でやって直します。基盤の部品も壊れると、昔の型番のシーケンス制御器をメーカーから取り寄せて、合う部品を取り外して使います。機械自体はシンプルで長く使えるので、職人の使い方次第です。大事に使おうとみんなに言っています」
工場の中には稼動することのない機械もあります。必要な部品を取り出すために、中古機の出物を買って使わずに置いてあるのです。ハイテクの先端技術がいつも最高とは限らない。ローテクの設備と従来技術が、現在の市場でも力を発揮しながら生き続けている場所があって、それを守っている職人がいるのです。

品質重視は当たり前、お客様に正直な仕事を続ける

同社への発注はすべて、昔からの取引先である専門商社やねじメーカーから入ります。ユーザーへの直接販売は行っていません。
「きちんとした品質はもちろん大事にしていますが、それはメーカーとして当たり前のこと。レストランがうまいものを出すのと同じです。そのほかに大事にしていることといえば、お客様に正直であることでしょう。小さなミスもすぐに明かしますし、工賃・材料費等の内訳は見積書ですべてオープンにしています。工賃は同じでも、材料費は常に変動しますから、下がったらその通り単価も下げますし、加工後に出た切り粉の下取り額も正直に提示します」(桑名氏)
だから代々商売は下手かもしれない、と桑名氏は笑いますが、それで信用もされて長年の取引が続いています。
「やりがいとかは考えたことがありませんが、自分のペースで仕事ができる良さはあります。成果がわかりやすいですし、ものづくりは好きですね。小さな事でも改善、改良はいつも考えています。今ある中でどれだけ綻びを無くしていけるかだと思っています」
と、仕事への取り組みを評価しています。とはいえ、桑名氏もこの事業スタイルがいつまでも続けられるとは考えていません。
「別のものを作るつもりはないので、できるだけ今の状態を維持していこうと考えていますが、さすがにそれも私の代まででしょう。ただし従業員のことは別ですから、その点の十分な準備はしています」 50年を超えて稼働するカム式自動旋盤と職人のものづくりの組み合わせ。いずれ来るひとつの時代の終わりを見通しながら、それを次につなげるのかつなげないのか、桑名製作所からはきょうも機械のリズミカルな音が聞こえています。

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