山口産業株式会社

ヤマグチサンギョウ

[業種]大分類:製造業 中分類:なめし革・同製品・毛皮製造業 小分類:なめし革製造業

会社紹介 PICKUP特集

独自のなめし技術で創るメイドインジャパンのエコレザー

クロムを使用しない“ラセッテー”のエコレザー

山口産業は1938年創業という皮のなめし加工の専門メーカーで、革業界ではタンナーと呼ばれる事業者です。生産の中心はピッグスキン、つまり豚革。同社はピッグスキンの日本を代表するタンナーの1社です。
同社の主力製品は“Russety(ラセッテー)”なめし革。これは、独自に開発したラセッテー製法によるなめし革で、1994年に特許を取得し商品化を開始しています。海外でも国内でも、なめし加工は重金属のクロムを使うクロムなめしが主流ですが、同社では以前から植物タンニンなめしを主体に生産していました。クロムなめしは比較的低コストで染色等の加工も幅広く可能なのに対し、植物タンニンなめしは革の風合いを生かした軽い製品ができるという特色があります。この植物タンニンなめしをベースに、製造環境も製品もよりエコロジカルで人にやさしいものにしようと開発したのが“ラセッテー製法”でした。
発売以来、ラセッテーなめし革は徐々に市場の評価を得て、2003年には輸出も開始し、2001年の東京コレクション出品、2006年のパリコレクション出品で注目を集め、2007年に環境負荷を低減する日本エコレザー基準(JES)が制定されると、その認定第1号となっています。
現在同社では、水を吸い空気を通す、肌にやさしい素上げ革の「ナチュラル」をはじめ、品のある透明感と光沢の「ニブリック」、新感覚のワックススエードの「カルム・クワイエット」、地シボを緊縮してふっくらとした風合いの「ラセッテー・シュリンク」など、ラセッテーなめしの製品ラインアップを拡充し、国内、海外の多くの有力革製品ブランドやメーカーへのピッグスキン提供を進めています。また、販売サイト「革創庫」を運営して、個人の顧客にも製品を1枚から工場直販しています。
また、こうした事業展開とともに同社では、革に関わる人たちや地域の住民と子どもたちに向けた“やさしい革の話(工場見学会)”の開催、害獣として駆除された鹿や猪などの獣皮をなめし革にして戻す“MATAGIプロジェクト”、途上国へのラセッテー製法の技術移転活動“ラセッテー・アクション・プログラム”など、社会的課題解決への貢献にも積極的に取り組んでいます。



メイドインジャパンの革産業を支える技術とスピリット

  • ラセッテーなめし

    植物タンニンなめしを改良した独自の人にやさしい“ラセッテーなめし”製法を開発し、そのなめし革が日本エコレザーの第1号認定を受けています。

  • メイドインジャパン

    生産者、タンナー、デザイナー、革製品メーカーをつないで、メイドインジャパンのピッグスキン産業を活気付ける活動を進めています。

  • MATAGIプロジェクト

    今まで廃棄されていた駆除後の害獣の皮を利用可能な革に変えて、地方の新しい事業創生を支援するMATAGIプロジェクトを進めています。

日本中、世界中を幸せにするものづくりを

「ラセッテーは今年(2015年)、開発開始から25年目になります。前社長の父がパリのレザーフェアを見に行って、革もこれからはエコロジーの時代になると知ったことから開発に取りみました。現在の製法を完成するまでに10年かかっています。開発投資も数億円に膨らみ、当社にとってはとても大きなものでした」
そう話すのは、7月に代表取締役に就いた山口明宏氏です。前社長の宗利氏は会長職に就いています。山口氏が同社に入社したのは20年前、28歳のときですが、会社を継ぐことは当然のことと考えていたと言います。
同社が生産するピッグスキンは革素材の中では数少ない純国産品で、かつては有力な輸出産業の1つでした。食肉文化の副産物として国内で月産約120万枚の豚皮産出があるそうですが、そのなめしの中心だったのが墨田区で、月に70~80万枚を生産していたといいます。しかし、靴やバッグなどの革製品メーカーが輸入品に破れ、閉鎖したり生産を海外移転する中で国内でのなめしの需要は激減しました。



「排水の規制が厳しくなったこともあり、戦前戦後には100軒ほどあった区内のなめし業者も現在は10軒しかありません。国内皮革業界もリーマンショック後に危機があり、やむなく現場の人員を半減し、生産量も減らしました」(山口氏)
しかし同社はそこで踏みとどまりました。最後にものを言うのは技術だと信じて、代々受け継いだ職人の技術と、独自のエコ製法のラセッテーの技術の融合に賭けたのです。展示会への出展を積極的に行い、卸商社、メーカー、デザイナー、百貨店・小売店に向けてラセッテーのアピールを幅広く進めました。
「日本の豚の皮はもともと品質が高いのです。今はほとんどがその皮のまま輸出され、海外でなめされて世界のブランドで使われていますが、日本の高い技術でなめしたピッグスキンなら世界で十分に通用するはずです」(山口氏)
今年も世界的なブランドからのラセッテー採用が決まっています。その山口氏を動かしているものは、なんとか日本の革産業全体を活性化させたいという気持ちのようです。山口産業1社がうまくいっても仕方がないという考えです。有力ブランドから同社の革を使いたいという話がきても取引は卸問屋を通して行いますし、自社でできる二次加工も外部の業者に依頼するなど、関連する業界全体で支えあっていくことを目指しています。
「いま、当社のものづくりのもとにある考え方は、ラセッテーの技術を通じて、日本中、世界中を幸せにしたいということです。逆に言うと、みんなが幸せにならない仕事は絶対やらない。それが判断の基準です」(山口氏)

地方を活かし、メイドインジャパンのパワーを生かす

山口氏は自社の事業を超えて、革に関わるビジネス環境と社会環境を少しでもいい方向へ動かしていこうとパワフルに活動しています。
大分前から開催してきた“やさしい革の話”という毎月1回の工場見学会、ラセッテーでの取引先や関係者が交流する“Club Russety”、レザービジネスの企画支援やコーディネートを行う“革童(カッパ)”、皮革関連産業の発展と地域住民の理解をはかる“NPO法人 革のまちすみだ”、なめしの作業環境が劣悪だったり天然皮の有効資源化ができていない途上国に技術移転する“RUSSETY ACTION PROGRAM”などなど。中でも今後特に力を入れていこうとしている活動として、“MATAGIプロジェクト”と“LEATHER CIRCUS(レザーサーカス)”があります。
「MATAGIプロジェクトの発端は、島根県と北海道で害獣駆除に関わっている方からの相談でした。鹿や猪などの農業への害獣を駆除した後その獣皮を廃棄しているのですが、これを活用できないかという相談です。いろいろ研究した後、大学のゼミやNPO法人などとも協力して、当社で獣皮を預かり、なめしてから還すという事業を始めたのです。1枚5000円(試しは1万円)という加工費のみで利益は出ませんが、なめしに使うドラムに余力があるので自社のものと同時に処理ができました。現在獣皮を送ってくる産地は108カ所になっています。今後は、各産地にクリーンエネルギーで稼働する加工工場をつくり、工房もつくって革製品を製作して販売するという展開を考えていて、大手商社の支援も決まっています」
と山口氏はMATAGIプロジェクトのこれからに大きな期待を寄せています。もう一方の“LEATHER CIRCUS(レザーサーカス)”は、これよりも実際のビジネスを生み出すことに力点を置いた活動です。
「LEATHER CIRCUSは完全メイドインジャパンの新たな環境づくりになります。革に関わる様々な会社や個人が自由に参加して、売りたい買いたいをマッチングさせる仕組みです。業種を超えたコラボレーションで、新しい革製品や革のビジネスを探る場にもなります。大きなプロジェクトで国の支援も予定されています。イメージマークには鹿と猪と山脈を配したイラストを使うことが決まっています」
山口氏は、日本の革産業の新しい展開をこのプロジェクトに描いているようです。こうした一企業の枠を超えた活動に関わりながら、山口氏は、山口産業が将来進んでいくフィールドをより大きなものにしていこうとする思いを熱くしています。

動画で見る「山口産業」

≪ PICKUP企業特集一覧に戻る

連絡先

住所〒131-0042 東京都墨田区東墨田3-11-10
TEL03-3617-3868
FAX03-3613-3239
WEB ホームページ 
会社紹介 PICKUP特集