飯田機械株式会社

イイダキカイ

[業種]大分類:製造業 中分類:生産用機械器具製造業 小分類:その他の生産用機械・同部分品製造業

会社紹介 PICKUP特集

外科用縫合針から農機具の開発まで技術で雇用を生み出す

分野を限らない独創の機械と製品の開発

飯田機械の事業はなかなか説明しづらいのですが、一口で言うと、生産用機械の開発や新製品、新部品の開発を行うというもの。ふつうでは実現が困難な加工技術や、それまでになかった製品・部品の考案と開発を請け負って、蓄積した技術と多彩な経験とアイディアを組み合わせて実現させるということです。
「自分で考えて自分でつくる仕事で、図面を貰って作るという仕事はしたことがありません」
と代表取締役の飯田宏氏が言います。例えば、外科の手術で使う縫合針。幅0.3ミリのステンレス(SUS304)製の針に、0.18ミリの糸穴を効率よく作成するにはどうしたらいいか。多くの縫合針では、針の頭に穴に向けた切れ込みがあり、ここに糸を通すと穴に収まって抜けない“バネ穴”という仕組みが使われています。しかし、このバネ穴もパンチプレス加工で作ると型がすぐ痛むため、効率もコスト面もよくありません。そこで相談を受けた飯田氏は新製法を開発しました。
「穴をあけるのでなく、穴を作るという発想による製法です」(飯田氏)
針の頭から縦方向にスリットを切り、そこに微小な矢じり型の金具を押し込み、両側から締め付けた後金具を抜き取って穴を作ります。加工機も開発し、8年前から鹿児島県鹿屋市の工場で縫合針の製造を行っています。
送電線ケーブルの疲労試験機の製作という例もありました。大手メーカーからの依頼によるもので、繰返し曲げ負荷による劣化を測るため、直径18センチにもなるケーブルの束を1.5メートル持ち上げる動作を2万回繰り返すという装置です。
「1年間持てばいいと言われていましたが、2年半経っても問題なく稼働しています」
と飯田氏は胸を張ります。
また、深絞り加工技術での画期的な開発の例もあります。
「直径53ミリ・高さ85ミリというアルミ缶を一発で絞ってほしいという依頼があって、専門の大学教授に聞いても不可能といわれたのですが、諦める寸前にあるアイディアを思いつき、ローテクの機械でも90ミリまでの深絞り加工ができるようになりました」(飯田氏)
鹿児島の工場で製作した新しい深絞り製缶機を発表すると、産総研(産業技術総合研究所)から塑性加工研究者7人が視察に訪れ、驚くと共に高く評価したといいます。現在、飯田氏はこの製缶機を利用して、大隅半島の漁港の味を旅行土産の缶詰として売り出す計画に協力しているそうです。
同社ではこのほか、医療器具、移動式小型水力発電機、農産物加工機、農機具など、分野を限らず独創的な新製品、新技術の開発を数多く行っています。



幅広い技術と経験に、知恵と工夫を足し算

  • 幅広い加工技術に精通

    深絞り加工技術、精密塑性結合技術をはじめ多様な金属加工技術の蓄積を有し、困難な加工も従来からの設備のみで行う能力があります。

  • 分野を限らない製品開発力

    開発する機械、器具、製品の分野に制限はありません。知恵と工夫を重ねて、独創性の高い開発を行うことをモットーとしています。

  • 地方の雇用創出を目的に

    地方に新たな産業や事業を育てるための機械や製品の開発を行って、地方に新しい雇用を創出することを最大の目標としています。

地方に目を向けて技術で雇用を創出する

「技術で雇用を生み出すこと。全ての私の発想のスタートはそこにあります」
と飯田氏は、さまざまな開発を進める理由について力を込めてこう語ります。鹿児島県鹿屋市に工場をつくったのも同じ理由からだったと言います。
「候補の中で最も交通の条件の悪いところを選びました。空港からバスで2時間、さらにタクシーで1000円程かかる僻地です。技術力があれば関係ないと考え、雇用創出の実現のために選びました」
設備もすべて本社から運び、新規購入設備は一切なしでした。新しい設備に頼らないというのも、飯田氏の変わることのない考え方です。
「加工では自然の法則を読めと言っています。開発は3日も考えてはだめで、ひねくり回すと身勝手なものになります。原理をとらえること、そうすれば難しい加工もローテクでもできることが多いのです」
本社では、恐らく製造されて50年以上経つと思われるボール盤が現役で稼働しています。



「刃が1ミリくらいがたつくのですが、これを使って幅0.4ミリの縫合針に0.15ミリの穴をあけました。原理を読んで機械に素直になってやればできるのです」
新しい深絞り加工機の開発に成功したのも、こうした考え方があったからだと言います。
「古代エジプトの石を割るくさびの原理を使っています。同程度の深絞りを2回で行うドイツ製の機械がありますが4億円します。うちの機械は1000分の1の40万円です。生産能力はドイツ製が毎分120個に対して当社機は20個ですが、6台並列で使えば同じ能力が得られ、故障によるライン停止のリスクも減らせます」
と飯田氏は、同社の開発に対する考え方の実現例を示します。こうした開発が、ノウハウや設備を集めることが困難な地方の産業にとって助けとなり、雇用の創出につながると考えているのです。

すみだの力を集めて6次産業化の支援を行う

飯田氏にはいま、雇用創出のために力を入れて取り組んでいこうとしている3つのテーマがあります。それが、深絞り、介護、農業の3つです。介護に関しては現在、時間の経過と共に自動的に寝床との接触面を変える“床ずれ防止ベッド”の開発を進めています。また、農業関連ではこれまでに、葱刈り機、梅干の種取り機、にんにく皮むき機、大根の小分け機、酒粕商品化機など、農作業の効率化や農作物加工の自動化を進めるユニークな機械を試作・開発してきました。特に鹿児島県と青森県で、地元の農業従事者や加工業者と協力して開発を行っています。こうした開発を、農林漁業生産と加工・販売を一体化する6次産業化の支援に生かし、雇用創出に結びつけようというのです。
さらに、飯田氏は、この6次産業化支援に墨田区の中小メーカーの力を結集できないかと考えています。
「いま6次産業化に必要なのは、高額な最先端の設備でなく、身の丈にあった道具としての機械です。それを作れるメーカーが地元にありません。すみだのメーカーが設備と技術を利用してそうした機械を作って全国に提供することで、地方は雇用を創出でき、墨田区は製造業の空洞化に歯止めをかけられます。開発のリスクは当社が引き受けるので、製造にすみだの力を集めていければと思っています」
と語る飯田氏は、かつて自身の人生の後半を大徳寺の美しい紅葉に託してこう詠んだそうです・・・蜂も蝶も招かず院の紅葉かな、と。



動画で見る「飯田機械」

≪ PICKUP企業特集一覧に戻る

連絡先

住所〒131-0041 東京都墨田区八広3-19-7
TEL03-3611-8404
FAX03-3611-8404
Emailメール送信
担当者飯田宏
会社紹介 PICKUP特集