硝子企画舎

ガラスキカクシャ

[業種]大分類:製造業 中分類:窯業・土石製品製造業 小分類:ガラス・同製品製造業

会社紹介 PICKUP特集

「びんや」の系譜と作家の目でガラス制作をコーディネートする

ガラス素材を使った受注製作を拡大

硝子企画舎は、「ガラスを使ってこんなもの作りたいのだが…」という注文、希望、相談に応える制作工房です。プランやデザインの提案からすべての手配、段取り、制作、納品までを責任持ってコーディネートします。自工房での制作が基本となりますが、量産が求められるもの、特殊な設備や方法が必要ものなど場合によっては、これまでの人脈とネットワークを使って専門の工場や工房に依頼し実現をめざします。相談やアドバイスだけなら無料、遠慮なく問い合わせてほしいと、代表の井上剛氏は言います。
こうした“受注制作”で多いのは、建築部材や内装、インテリアのアクセントパーツといったもの。店舗の壁の一部や、マンションエントランスの明かり取り、照明のシェードなどです。都内のある百貨店の婦人靴売り場には、井上氏がコーディネートしたガラスのハイヒールが連なったシャンデリアが吊り下がっています。
このほか、ガラス瓶に関する依頼や、ガラス製品の修理なども請負っています。
工房ではこうした業務のほか、ガラス工芸講座の開催、工房プロダクトの制作、井上氏と奥様の井上枝利奈さんの個人作品の制作、そしてその展示販売なども行っています。工房内には「プリズムプラス」というギャラリーが併設されていて、ここで展示販売を行うのですが、定期的に開催する企画展示ではガラスにこだわらず様々な造形作家に発表の場を提供しています。
その硝子企画舎で、制作の中心にしている技法がキルンワークとコールドワークです。
キルンワークは電気炉で加熱して成形・加飾する方法をいい、技法はいく通りかありますが、ここでは耐熱石膏で作った型に粒状のガラスを充填し、電気炉で焼成するキルンキャスト(電気炉鋳造法)を得意としています。型を壊して作品を取り出すので型の使用は1回限り、そのため量産には不向きですが他の方法では難しい形状のものも制作可能です。コールドワークは、成形されたガラスを削ったり磨いたりする方法で、切子もその1つです。キルンワークでできたものをコールドワークで2次加工する、という具合です。



ガラスの魅力を引き出し育てる力

  • ガラスのコーディネーター

    作家、工房、工場、教育機関・・・ガラスに関わる広いネットワークがあり、ガラスを使ったあらゆる作品、製品づくりをお手伝いできます。

  • 数少ないキルンワーク工房

    石膏型と電気炉でガラスを成形するキルンワークは、やさしく温かみのある作品を創り出します。これを得意とする工房は都内でも数少ないのです。

  • つくる、学ぶ、発信する

    ガラス素材のおもしろさと可能性をより多くの人に知ってもらうために、教室、ワークショップの開催、制作の場と発表の機会の提供も行います。

ガラス素材を起点にして可能性を広げていく

「子どもの頃から、ガラスで仕事をするのが当然のこととして育ちました」
と井上氏が言うように、滋賀県近江八幡市にある実家は、明治16年に「びんや」として創業して以来のガラス瓶工場。現在は兄さんが継いでガラス製品商社となっています。
「兄たちは工場経営を考えた進学をしましたが、私は進路指導の美術の先生に創作の方向を勧められて・・・」
もともとつくることが好きだったこともあって1989年大阪芸術大学に入学。陶芸を学び、その後、富山ガラス造形研究所、金沢卯辰山工芸工房でガラス工芸を学びました。最初にアトリエを開いたのは金沢でしたが、2006年に江東区の門前仲町に移ってきました。奥様が向島出身ということもありましたが、この地を選んだ第一の理由はガラスとの関わりです。
「江東区と墨田区はともにガラスの歴史のあるところで、その中で仕事をしたいという思いがありました。はじめは自分の作品制作とガラス工芸の教室、そして受注制作です。東京で仕事をするのですから、いろんな人たちと一緒にやりたいですし、自分に求められることには全て答えたいという方向ですね」



先生としての仕事としては、大阪芸術大学の非常勤講師と武蔵野美術大学の特別講師を務めています。受注制作の仕事も徐々に増えて、手狭になったため平成24年に現在の墨田区錦糸町に移り、工房兼ギャラリーという形ができました。実はここ、昔はバケツ製造工場だったらしく、鉄骨や壁やクレーンがそのまま残っていて、それがいい雰囲気です。
「ここでは、ガラス素材を起点にして、ジャンルを問わずに可能性を追求していきます。ガラス素材でできることと、ガラス素材で何かしたい人とのつながりで、いろいろな取り組みを広げていきたいと思います」
と井上氏は期待を込めて話します。

若者とともにすみだで育っていく

今後の方向としては、「こうしたいというより、自分にできること、役割は何かを考えていきたい」と井上氏は言います。
その役割としての1つには、キルンワークを仕事にしたいという人に経験の機会と場所を提供することがあります。
「日本におけるアートとしてのガラスの歴史は本格的にはまだ30年くらいで、学校で専門に学べるようになったのも20年くらい。キルンワークはまだ個人制作の工房がほとんどなので、卒業しても働く場所がありません。それで工房をシェアしているのです」
現在シェアアトリエという形で、工房の一部を小部屋に区切って制作作業に使えるようにしていて、若い作家が何人もここに出入りして利用しています。これがうまく機能することを井上氏は願っています。
「去年、ガラス工房がまとまって東京ビッグサイトに出展してガラス素材の可能性をアピールする機会をもち、インテリアや建築に関わる多くの方に関心を持ってもらえました。また一般の方にも広く工房をオープンにしています。体験教室の申し込みも増えてきましたし、夏休みに開く子供向けワークショップも人気があります。ガラス素材とキルンワークの魅力をもっと広げていきたいと思います」
一方で、墨田区の“工房ショップ”になったことで、地域とのつながりもできてきました。
「付き合いができていろいろ教えてくれるのがありがたいです。ガラスのすみだでいい仕事をして、さらにここから新しいガラス文化の発信ができればいいですね」
と井上氏は、すみだで育つ硝子企画舎の将来を思い描いています。



動画で見る「硝子企画舎」

≪ PICKUP企業特集一覧に戻る

連絡先

住所〒131-0045 東京都墨田区押上3-6-1
TEL03-3610-8255
FAX03-5608-9392
Emailメール送信
WEB ホームページ 
会社紹介 PICKUP特集