幅広いニーズに応える型抜き加工の技術

サトウ化成は型抜き加工を行う小規模専門メーカーです。型抜きするのはウレタンフォーム、ポリエチレンフォーム、ゴム、樹脂シート、樹脂パネル、接着シート、紙など、金属以外の幅広い素材。製造品で多いのは、衝撃に弱い製品を保護する硬質ウレタンフォームの緩衝材や梱包材、設備・装置の柔軟性のある部材、パッキンなどです。
抜き型には主に、指定の形状通りに折り曲げた鋼製の刃を合板に埋め込んだ「ビク型」を使います。これを油圧プレス機にセットし、テーブルに置いたウレタンフォーム材に押し当てて切断します。同社の型抜きは、薄いシールなどから大型で厚いスポンジ材まで対応でき、特に110ｍｍ程度の厚さまで加工可能な点は1つの特長となっています。このほか精度を求められる加工には、彫刻刃やピナクル型を使った型抜きで対応しています。
また、同社は、どんな形の品物も収納できる、さいの目状に切り込みの入った緩衝材「ST310A」を開発し、電子機器等のキャリングケースや社内通い箱に詰めて利用することを提案しています。さらに、MDファクトリーHS㈱と枚岡合金工具㈱と、デスクの引き出しに敷く収納マット「3S絵姿管理キット」を共同開発し、生産と取り扱いを行っています。マットの一部を使用する文具などの形に切り抜き収納を効率化するツールで、3Sとは整理・整頓・清掃を表します。
また、型抜きとは分野が違うのですが、工作機の刃物や医療器具の非粘着性、滑り性、撥水性を高める「SNフッ素コート」の施工サービスもビジネス化しています。

若手後継者との交流でビジネスを広げる

「考え方を変えれば、中小企業のビジネスはもっと伸ばすことができるのだと感じた」
専務取締役の佐藤憲司氏は、若手後継者を育てるフロンティアすみだ塾に参加したときの発見をこう振り返ります。 サトウ化成は、もともとアパレル業界にいた父の勝男氏が1989年に設立した、業界では後発の会社です。佐藤氏も大学卒業後はソフトウェア業界で勤務し、29歳のときに設立10年目の同社に入りました。
「それまで経営なんて考えなかったのですが、リーマンショックで仕事が落ち込んだときにたまたますみだ塾を知り、行ってみると若い人が多くて驚きました。塾の一人ひとりがストーリーを持っている。もっと伸びると直感的に感じて通ううちに、いろいろつながりができて、お互いにやっていることを知ると、こんな案件あるけど一緒にできる？という話も出てきました」(佐藤氏)



大阪の企業と連携してSNフッ素コートの事業化を決めたのも、異業種企業と共同で3S絵姿管理キットを商品化したのも、そうしたつながりを広げていった結果でした。
「こんなものできる？できますよ、これでどう？と話が早い。私自身、ビジネスへの考え方が変わったと思います」(佐藤氏)
学生、企業、一般の人に向けた工場見学も、積極的な受け入れを始めました。ある高校の先生は、見学後、感動したと話してくれたそうです。
「もっと自信を持って話したほうがいいよと言われて、もっと情報発信していこうと思いました」(佐藤氏)

型抜き加工をベースにBtoBの新しい展開を

佐藤氏は、今後の事業展開について、現在の型抜き加工は強化しながら新たな方向も積極的に探っていきたいと考えているようです。
「型抜き加工は基盤事業として、より幅広いニーズに応えていきます。その上で異分野、異文化との連携を探りながら、切り込んでいく市場の幅を広げていこうと思います。あくまでBtoBでのビジネスでと考えています」
そこでは自社のブランディングということも必要になってくるとみています。
「製品を一番下にして、逆ピラミッド状にその上にライフスタイルがあり、さらに文化がある。ある人からそういわれて共感したのですが、そのしくみをつくり出すことをやっていきます。ファンづくりも大事です。やっていることへのファンづくりと、私という人間へのファンづくり。すみだ塾に出てからそう心がけてきています」
と語った佐藤氏は最後に、「知らない世界の人と話して、新しいことが生まれてくると思うし、みんなが良くなっていけばいいなと思います」と述べていました。

動画で見る「有限会社サトウ化成」