小規模ながら複数工場で多種の加工を連携

堀内製作所は昭和23年(1948年)創業という金属加工メーカーです。そのいちばんの特長は、本社とその周辺に板金、プレス加工、機械加工、溶接、焼付塗装から組立までの工場を揃え、金属加工の幅広い工程を1社でカバーしていることです。
「お客様の図面1枚だけでほぼ全ての加工が社内でできて、完成した製品をお渡しできます。工程ごとに発注先を変える手間がないので、お客さまにとっても楽ですし納期も早くできます。あそこへ持っていけば何とかなる、ということで注文をいただけるのが嬉しいですね」
と話すのは社長の堀内和彦氏。2代目ですが既に40年以上同社で仕事をしてきました。
入社当時はプレス加工中心で、オーディオアンプに組み込むトランスのカバーを絞り加工で量産していました。しかし、量産のプレス加工が海外へと移っていく中で、このままでは生き残れないと判断し、多品種少量生産への対応と加工種目の拡大へと舵を切ったのです。
まず溶接を加え、次に機械加工の幅を広げ、1978年には塗装工場を備えました。吊り下げコンベア方式ではなく手作業式の塗装工場なのですが、小回りが利くことで少量生産での強みになりました。その後1988年のNCタレットパンチ導入をはじめとして、各種のNCマシンの導入を続けレーザー加工機も備えて、設備面では非常に充実した態勢を整えています。巨大な鉄製ギアが付いた古くからのプレス機を大事に使っている一方で、最新のマシンが稼動する工場が、同社の歴史と時代のニーズに柔軟に対応する姿勢を表しているようです。堀内氏も、「だんだんと加工範囲を広げてやってきましたが、それがなければ今頃当社もなかったでしょう」と述べています。

部品だけでなく機械の開発・製造もこなす

同社では社長が中心になって時々、依頼を受けた少し妙な機械や装置の開発を行っていることがあります。例えば、自動クレープ焼き機やタコ焼きを容器に並べて入れる自動機など。機構を考え設計し、部品を製作し、電気回路も作り、試作を重ねて製品化する。1つの製品が丸ごと全て自社内製作できます。
変わったところでは、金属カスのサイクロン集塵機というものも製作しています。プレス加工時に出る金属カスを集めてダクトパイプを通して空気搬送し、分別して集塵かごに溜める装置。圧送方式なのでパイプ内の空気の流れが吸引式とは違い、金属カスや加工油によるパイプの内壁やファンの汚損がないそうです。区内のあるメーカー向けのOEM製作ですが、ユニットや部品の全ての加工と装置としての組立までを行っています。



同社では、部品の金属加工だけでなく、1つの機械製品や装置の全体を開発し製作する力も備えているといえそうです。
「私は若い人の採用の面接の際に、日本は資源が何もないのだから、ものをつくって輸出しないとだめだ。ものづくりのこの仕事をやっていれば食いはぐれないぞ、と言うのですが、どうもあまり理解されないようです」
と苦笑いする堀内氏ですが、その氏が社内で最も重視しているのは｢安全｣ということです。
「けがをするなということです。機械はものを言いませんが壊れるものです。機械は壊してもいいから身体はこわすなと言っています。安全は絶対です」
と工場に目を光らせます。

自社ブランドでの製品づくりを目指して

「今まで他人の機械を作ってきましたが、できれば自分で考えたものを自分で作りたいと思っています」
というのが、将来に向けて堀内氏が掲げる目標です。そのために、さまざまな技術を自分のものにして、いろいろな製品づくりをこなしてきたと言います。クレープや鯛焼きの機械もその中の1つとして、楽しんで取り組んできたようです。「自社ブランドで作って値段をつけて売るのが夢」と笑います。
事業を継いで加工種目の拡大を進める際、先代の父に対して、「金は出してくれ口は出すなと言ってきた」と振り返る堀内氏。現在、次男の英和氏が、中堅部品メーカーの海外工場での勤務経験を経て5年前に入社し、現場の中核に育っています。後継者としての期待を寄せながら、「息子も好きにやればいい」と堀内氏は話しています。

動画で見る「有限会社堀内製作所」