有限会社大松染工場

ダイマツセンコウジョウ

[業種]大分類:製造業 中分類:繊維工業 小分類:染色整理業

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粋でモダンな江戸小紋の技を未来につなげていく

現代の名工が育てた捺染工場

大松染工場。染工場は「せんこうじょう」と読みます。布の染加工を行う、古くからの染工場です。
大松染工場は、昭和9年(1934年)の創業で、伝統の江戸小紋染、江戸更紗染の技術を受け継ぎ、それらを使った反物の製造と着物の製作、およびその染め技術を応用したその他の様々な布製品、小物類、皮革製品を製造しています。さらに同社は、独自技術の開発により、この染めをポリエステルなどの化繊にも施すことに成功しています。
江戸小紋とは、遠目からは無地に見えても、近づくと微細な模様が全面に施されているという着物生地で、名前の通り江戸時代に生まれました。細かい模様を彫る型紙職人の高度な技と、その模様を鮮やかに染める染職人の高度な技とが一体となってつくり出される粋で美しい染物です。
一方、江戸更紗は、室町から桃山時代にインドから中国へ渡来した更紗が、日本の型紙を使った染色技法によって、渋みのある多色使いの生地に変わったものといわれています。
どちらも「捺染(なっせん)」と呼ぶ技法の製品。捺染とは、糊と染料を練り合わせたものを、型紙を使って布に刷り込み、蒸気で加熱して染料を定着させ、余分な染料や糊の除去処理と水洗いをして出来上がるという技法です。同社は、この伝統的な型紙を使った手染めによる捺染にこだわっている染工場です。
同社社長の中條隆一氏は、江戸小紋、江戸更紗の技術の優れた継承者で、これを現代の生活の中に活かす斬新な作品を次々と発表しています。東京マイスター認定(2005年東京都知事)をはじめ、伝統的工芸品産業功労者等経済産業大臣表彰(2007年)、「現代の名工(卓越した技能者)」表彰(2008年厚生労働省)、墨田区登録無形文化財(江戸小紋)保持者認定(2012年)など多くの受賞があり、平成25年(2013年)春の黄綬褒章を授与されています。



伝統の技術とデータベースを組み合わせる

  • 江戸小紋の伝統技術

    江戸時代からの染めの技術と伝統を受け継ぎ、染職人の磨きぬいた技と心意気が感じられる品物をつくりあげています。

  • 型紙データベース

    これまでに揃えた型紙10,000枚以上を保有し、画像データベース化し、ディスプレイ上で染めのシミュレーションも可能になっています。

  • 伝統を未来につなげる

    綿50%、ポリエステル50%の交織の布など、ほかでできない染色にも挑戦し、伝統をそのまま続けるのでなく未来につなげる開発を常に進めています。

いい時悪い時を超えてたゆまず進む

「かたつむり そろそろ登る 不士の山」は小林一茶の句ですが、先代の父・中條福松氏がよく口にしていたと隆一氏は言います。毎日、毎日僅かでも歩み続けることで、いつか高い頂にも至る日がくると教えたかったのでしょうか。
隆一氏は昭和34年(1959年)、18歳で大松染工場に入りましたが、昭和41年(1966年)に先代が亡くなり25歳の若さで社長を継ぐことになりました。
「取引のあった問屋さんたちが、私を引き立てようといろいろ注文をくれるのですが、それが他ではやらないような難しい注文ばかり。私は断れない性格ですから、受けて必死に何とかして仕上げる。それで技術を豊富に持てました。でも仕事は楽しかったです。ただ、腕のいい職人たちが出ていってしまったときは大変苦労しました」



職人は一人ひとりが独立したプロ。仕事量に応じた手間賃が収入源で、手間賃をドンと払う仕事場があれば移っていくのも仕方のないことでした。
「それで追い込まれて、職人の腕を設備でカバーすることを考えたのです。枠を使うやり方です。風呂敷を作る葛飾の染色屋さんで多く使われていた技法で、それまでの江戸小紋製作になかった独自の設備を作りました」
昭和48年(1973年)に工場を増築すると、その2年後から数年間、染物市場は活況を呈しました。
「昭和50年(1975年)を境に設備と型紙に投資したおかげで現在に至っております。市場は縮小しましたが、平成に入ってまた少し上向きになった気がします」
この間、同社は、各地での伝統工芸の企画展への参加や、個展の開催、本社内での直接販売工房ショップと江戸小紋博物館の開設、江戸小紋の染体験教室の開催など、江戸小紋の伝承とPRに努めてきました。新しい技術の開発にも取り組み、型紙のデータベース構築も進めました。隆一氏個人も現代の匠として多くの表彰を受け、同社の製品も伝統工芸産業分野や染色業界での受賞を数多く得ています。
大松染工場のかたつむりは、歩みを止めることなく登り続けているようです。

1つに特化せず広く新しい展開を目指す

現在、同社の製品の販売機会で最も大きいのが、各地の百貨店が開催する様々な職人展や伝統工芸品展での展示販売です。
「百貨店のお客様は細かい柄を望まれることが多く、技術の向上になりました。今後はこうした外部の販売に頼るだけでなく、本格的な自社の店舗での販売もしたいと考えて準備を進めています。新しいことを考えると活力が湧きますよ」
と隆一氏は笑って話します。東京都の染色工業協同組合の小紋部門がすでに10軒近くまで減少する中で、同社は同業内でもかなり多い10人という従業員を擁して活発な活動を展開しています。
「小紋染・更紗染、素材は絹・木綿・化繊・皮革、商品は和服・浴衣・ブラウス・手ぬぐい・小物・・・と広く製造していくつもりです。ただし、捺染からは外れないでいきます。あとは事業の継承です」
隆一氏の長男・康隆氏が早くから後継者の道を選び、京都の呉服商社で7年修行した後、平成13年(2001年)に同社に入社。常務取締役となった現在も、工場の現場に張り付いて技術を磨いています。
「常務も、新しいものづくりで前へ進もうという考えでいます。当社は、小紋でも更紗でも、絹でもそれ以外でも、設備と技術では負けないと思っています。是非、他でできない新しいことをやっていきたいものです」



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テクノシティすみだ PICKUP企業特集 vol.13-2 「 有限会社大松染工場 」

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