HIS-FACTORY

ヒズファクトリー

[業種]大分類:製造業 中分類:なめし革・同製品・毛皮製造業 小分類:かばん製造業

会社紹介 PICKUP特集

時代の変化に応じた適応能力の高

下請けから脱却、自社ブランドを立ち上げる

HIS-FACTORY(ヒズファクトリー)はイタリアのレザーを使った鞄から財布・名刺入れなどの小物類までをハンドメイドする工房ショップです。
代表の中野克彦さんは1980年代前半に蔵前(台東区)の鞄などの金具店と鞄メーカーに約4年間勤務し、1989年に鳥越(台東区)にて独立。OEMとして他社ブランド製品を鞄職人さん達に作ってもらい、自身は営業を行っていました。しかし、下請けであるが故の薄利多売のため、苦しい経営が続きます。そんな苦しい環境からの脱却を目指し、墨田区へ移転します。2006年には自社ブランドHIS-FACTORYを立ち上げました。翌2007年には墨田区の「すみだ3M運動」の工房ショップとして認定されます。東京スカイツリー®が開業した2011年には、地域でのイベント「第一回すみだ川ものコト市」、2012年には「浅草A-ROUND」へ出店をしました。下請けの仕事を行っていた20年間とは違い、様々な人たちと出会い、色々な意見を貰うことにより中野代表の意識は大きく変わります。同年には墨田区内のオープンファクトリーイベントである「スミファ すみだファクトリーめぐり」にも参加し、区内の方たちとも多くの繋がりが出来ました。
(写真:代表の中野克彦さん)


リアルだけでなくネットを駆使した販売戦略

自社ブランドを立ち上げてからは直接、消費者の方に販売を行うB to Cが中心となります。最初のうちは他社ブランドの製品製造(OEM)を継続していたため自社ブランド製品は少ない品揃えしか出来なかったそうです。さらに、接客の経験すらなかったため、商品が売れるためにどうすれば良いか考え抜きました。そこで、製品のこだわりを自分自身の言葉と写真でホームページに掲載し、SNSやブログを毎日更新したそうです。
初めての催事は他の出店者と比較すると1/3の売上にもならず、なぜ売れないかも分からなかったそうです。それからも積極的に様々なイベントなどに参加し、失敗を含めたたくさんの経験を積むことで多くの学びを得ていきました。そして、コラボレーションにもチャレンジしました。特に、蔵前のm+(エムピウ)さんとのコラボレーションによる「ガリアルド」は日本をテーマにしたセレクトショップである藤巻百貨店さんで扱って貰えるきっかけとなりました。また、「スミファ すみだファクトリーめぐり」に参加してからは異業種のものづくりの方々との繋がりも出来ました。その中で出来たのが合切袋(がっさいぶくろ)「ottone(オットーネ)」です。最初はプラスチックの部品で紐止めの金具を作りましたが、革の経年変化とのバランスが悪いため、真鍮で作りたいと思い、「スミファ すみだファクトリーめぐり」に参加している東日本金属株式会社さんへお願いしました。これも藤巻百貨店さんで人気となりました。他にもYouTubeやInstagramライブなどの情報発信に積極的に取り組んでいます。今ではインターネット上にあるHIS-FACTORYの情報網が広がり、集客という成果を生み出しています。



左)ガリアルド 右)合切袋


商品が売れる仕組み

  • ブログとYouTube

    オープン当初から書き続けた膨大なブログがお客様の検索にヒット!財布の経年変化を紹介するYouTubeの再生数は1年間で7万回以上。
    (写真:今でも更新が続く膨大なブログ)

  • ショップ

    工房の2階のショップでは新品だけでなく経年変化後の商品を実際に手にとれます。購入だけでなくカスタムオーダーなどの相談も出来るのが特徴です。
    (写真:経年変化(エイジング)した商品)

  • EC販売

    自社サイトだけでなく、藤巻百貨店や FREE SPIRITS,など複数のサイトで購入できるほか、墨田区のふるさと納税の返礼品としてもお受け取りすることができます。
    (写真:お店の公式Webサイト)

革へのこだわり

中野代表が他社製品ブランドの下請けをしていた頃は安価で薄くて軽く柔らかい、支給されたクロムなめしの革を、職人さんに製作依頼していました。一方で植物の樹皮などから抽出したタンニン(渋み成分)を使ってなめすイタリアのベジタブルタンニングレザーは、高価なためかアパレルメーカー等の一部でしか使われていませんでした。中野代表は、ベジタブルタンニングレザーを知識としては知ってはいましたが、雲の上の存在と思い、触ったことすらなかったそうです。ある時、そんなベジタブルタンニングレザーで商品を作って欲しいと中野代表の元へ持ち込まれました。その色味だけでなく触ってみて気持ちが高揚したそうです。その革はタンニンとオイルを多く含んでいるため、切った時の断面であるコバを磨くとクロムなめしの革とは異なり、美しい艶がすぐに出ました。そしてその最大の魅力は年月を経ると共に色の深みと艶が表れる経年変化です。つまり、味が出るのです。「自社ブランドでは絶対にイタリアの革を使う」と中野代表は心の底から思ったそうです。そして、その革で作ったA4サイズの鞄が初めて売れた時は今でも忘れられない喜びがあったそうです。そんなイタリアのベジタブルタンニングレザーを使うことがHIS-FACTORYの商品のこだわりであり、魅力であると言えます。

(写真:イタリア植物タンニンなめし革協会の品質保証マーク)

すみだの地で革鞄をつくる楽しさを伝え続けたい

お客様がオーダーする逸品物については、そのこだわりに寄り添いながら製作するため、お待たせしてしまっている方も多くなってきました。これらの製作は、全て、一点もののため、同じ工程の繰り返しではなく、製作スタイルを変更しています。このような製作方法は、既に型の決まっている製作とは違う作業があるため、難しさはあるものの、革鞄をつくること自体が好きな中野代表にとっては、ワクワクする瞬間のようです。さらに、この「楽しい」感情が全ての原動力になっており、お客様の逸品製作に携われることに喜びを感じているそうです。中野代表が見習いをしていた当時から、指示通りにこなすだけでなく、先のことを考えながら行動する癖がついており、それが今、いろんな場面で活きていると実感されています。
海外に目を向けると、イタリアには若い人が教えを請うために世界中から集まる工房があり、その工房には80歳を過ぎてもなお工房に立ち続けている職人がいるそうです。中野代表は、出来ることならすみだの地で、その方のように小さな工房兼ショップで若い人たちに、革鞄をつくる楽しさを教え続ける未来を描いています。もし、革鞄づくりを教えてほしいなどの見習いの要望があれば、真摯に向き合っていきたいと仰っています。
(写真:中野代表が革の裁断を行っている様子)

沢山の人たちとの出会いに感謝

すみだの地に移転し、様々なイベントなどを通して出会ったお客様、ワークショップ参加者、すみだでものづくりを行う方々からは、たくさんの経験や喜びの栄養を貰っているそうです。「好きなことをやって良いのだということが分かったので、今では仕事がメチャメチャ楽しい」と嬉しそうに語ってくれました。

(写真:ワークショップの体験者が行う手縫いの様子)





取材日:2023年8月28日


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担当者中野克彦
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