墨田革漉工業株式会社

スミダカワスキコウギョウ

[業種]大分類:製造業 中分類:なめし革・同製品・毛皮製造業 小分類:その他のなめし革製品製造業

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区の事業を活用し自社製品を開発

古くから人々に親しまれている皮革製品の特徴は、手触りが良く丈夫で、上質な美しさがあること。そのメリットを生かし、革袋や革トートバックといった自社製品を開発したのが墨田革漉工業です。社名の通り、革の裏面を削って薄くする革漉き(かわすき)加工を中心に皮革加工を手掛ける会社でしたが、区の「ものづくりコラボレーション事業」に応募したことで、プランナーの松田朋春さんが代表を務める「典型プロジェクト(注1)」の一環として、以前から革素材を提供していたデザイナーの真喜志奈美さんとコラボレーションし、自社製品を実現しました。現在、会長を務める4代目の佐藤元治さんが自社製品にチャレンジした理由をこう語ります。
「革の加工だけをしていると、どのように革が使われ、製品になっているかまではわかりません。以前から仕事が受け身になってしまうことを課題に感じていたのです。高い縫製の技術を持っている職人さんを探すのに手間取るなど開発には1年以上を要しましたが、商品にする際の注意点や工夫点を学ぶことができました。」
同社では、真喜志さん以外にもアクセサリーを手掛けるcarmine(カーマイン)さんや革小物等を製作・販売するrecomma(リカンマ)さん、革のパンプス等を製作・販売するatelier65(アトリエロクゴー)さんにデザイン性の高い革素材を提供しています。

(注1)「典型プロジェクト」とは、日本の工場に根付いた「精度の文化」(性格・誠実・清潔)を通して、新しい典型の原型を開発したいと考え立ち上げられたプロジェクトのこと。


大正時代に創業。革の計量のための事業が拡大

そもそも同社の創業は大正時代に遡ります。最初は、なめし革をカンナで漉く業務で事業をスタートしました。天然の皮は厚みがバラバラで、なめすだけでは製品材料になりません。スライスして靴や鞄、衣料、バッグ、ベルト、小物など用途に適した厚みに揃える必要があるのです。
その後、同社では後工程になる「アイロン」や面積の計量、表面加工の分野にも進出しました。特に、表面加工では表面に凹凸で模様を付ける「型押(エンボス)」や様々なフィルムで模様を付ける「スペシャルドット」、抜き型を使って革に穴を開け模様をつける「パンチング」など10種類もの加工技術を確立。デザイン性の高い革素材をメーカーや革問屋、デザイナー工房に提供しています。
でも、それ以上に同社の成長を決定づけたのが、日本で初めて海外から革の面積を測る機械を導入したことでした。それまでは革の面積を手作業で計測していましたが、これだと人為的なミスが出やすいうえに時間もかかります。同社では皮革面積計を導入したことで、正確性とスピードが飛躍的に向上。1970年代から1980年代にかけ、革素材をヨーロッパやアメリカに大量に輸出するまでになりました。現在は、この機械が老朽化したことから、さらに精度の高いデジタル式皮革面積計を導入しています。






海外視察を通して本場のデザインや機械を導入

本社のショールームを訪れると、そこには多彩な加工技術によって生み出されたカラフルな美しい革素材のサンプル生地が展示され、見るだけでなく手で触れることもできます。皮革製品のデザインは、形だけでなく表面にどういった加工が施されているかによって大きく左右されます。
そこで、同社は早くから皮革製品の本場であるヨーロッパ視察を毎年実施し、最新の技術やデザインを取り入れることに力を注いできました。イタリアで注目された新技術の、革が膨らんだように立体的に見せる3D加工をいち早く導入できたのも、そのためです。また年2回、ミラノ(イタリア)で行われる展示会に参加し、その成果を最新コレクションとして国内で発表する展示会も開いています。
海外視察の効果が出ているのはデザインばかりではありません。事業の成長を決定づけた皮革面積計がそうだったように、そのほかの機械も多くが海外からの輸入です。それを日本仕様にアレンジしているほか、佐藤さん自身も機械メーカーがなくなっても困らないよう修理やリノベーションの習得を進めていると言います。

墨田革漉工業の強み

  • 皮革面積計

    動くベルト上に皮革を置いて流し、その影を計測することで価格のもとになる面積値を正確に計測します。日本で初めて海外から導入したことで、会社が飛躍するきっかけになりました。

  • 革漉き

    天然の皮は厚みがバラバラなので、製品にするためには機械で一定の厚さに漉く必要があります。同社では、海外から導入した機械を日本仕様にカスタマイズ。職人技によって0.3mmの薄さまでスライス可能になっています。

  • 多彩な表面加工技術

    革素材の表面加工は、製品のデザイン性を大きく左右する重要な技術です。同社では「型押(エンボス)」をはじめ10種類ものバラエティ豊かな加工技術を保有。施すデザインについても毎年、イタリアの展示会を視察して最新のものを取り入れています。

仕事の付加価値を高め伝統産業を次世代に

「皮革産業は昔から墨田区八広の地場産業であり、かつては周辺に150以上のなめし工場がありました。しかし、現在では2~3所ほどになっています。なめし加工は、工賃の安い海外にとられました。それだけに、デザイン性や自社製品など付加価値を高め、伝統産業を盛り立てていきたい」と語る佐藤会長。
グローバル競争が激しさを増すなかで、伝統産業を次世代に受け継いでいくのは容易なことではありません。しかし、同社では革製品の本場である海外の最新デザインの導入やデザイナーとコラボとした自社製品の開発などに取り組むことで、難しい課題に果敢にチャレンジしています。工場では、同社を支える皆さんが生き生きと働いています。



取材日:2023年1月13日

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