株式会社小林断截

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[業種]大分類:製造業 中分類:印刷・同関連業 小分類:製本業,印刷物加工業

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製本ディレクターとして独自の地歩を築く

1963年に創業した株式会社小林断截は、商業印刷物の製本を主業務としてきました。代表取締役である小林宏慈さんの父・康男さんが墨田区内で断裁機1台から事業をスタート。以来、事業を拡大させ、1999年に現在地である緑二丁目に本社・工場を移転しました。 主力となる商業印刷物は、パンフレットや会社案内、カタログ、チラシといった広告物がメインで、これらは主として印刷会社から受注しています。その一方、グラフィックデザイナーなどのクリエイターとコラボレーションしたり、オリジナルのメモブロックを開発したりといった、製本会社の枠にとらわれない活動を広げ、いわば、製本・造本ディレクターとして業界内に独自のポジションを構築してきました。




オリジナルのメモブロックを開発

「規模の拡大を求めないという経営方針を貫いています」と語る小林代表。印刷業界は1990年代の前半に出荷高のピークを迎えましたが、その後はインターネットの急速な成長などからペーパーレス化が進み、縮小傾向が続いています。需要の拡大が望めない中、旧来型の受注型製造業に留まっていると、価格競争に疲弊していく一方となるのが現状です。こうした状況にある中で、事業を継いだ小林代表は、価格競争に巻き込まれない戦略を模索していくこととなりました。
その一つのきっかけとなったのは、前述の同社オリジナルのメモブロックです。ビジネス界では年賀のタオルが定番化していますが、その必要性に疑問を持った小林代表は、それに替わるものとして使い勝手の良さを追求したメモ帳を開発し配布したところ好評を得ました。すると、これを見た取引先等からメモ帳の注文が次々と舞い込むようになったのです。自社用のメモ帳で開発したスタイルをベースに、注文先の要望に応じてカスタマイズしていくというやり方で受注を伸ばしました。




グラフィックデザイナーとのコラボレーションに活路

「機械を回すことを目的化せず、お客さんのつくりたいものに寄り添い、目の届く範囲でクオリティの高いものを生産していきたい」と語る小林代表。この言葉のとおり、クリエイターとのコラボレーションに当たっては、「まずは『何を創りたいのか』という相手の志を受け入れ、製本・造本のプロという立場から提案を行っていく。どんな要望に対しても、可能な限り最適解を導き出せるよう努める」ことが、小林代表のディレクションの姿勢です。 それを可能としているのは、印刷業界に張り巡らした多彩な人脈。製本業界や印刷業界の組合役員なども務めつつ、同業者との連携を深めてきました。
「一口に製本屋さんと言っても、それぞれ得意な分野があります。特殊な技術を持っている会社も数多く、それぞれの技術上の特徴を把握しておけば、お客さまの実現したいことと結びつけて提案できるのです。それこそ、東京中の製本会社の最高の技術を熟知しています。また、各印刷会社でもそれぞれ得意分野があるので、関係性は重要です」と小林代表。自社でできないことは、他社に外注するなどして、クリエイターの要望に応えていくといいます。こうして1つの作品を創り上げると、多くの場合、リピーターとして次の依頼に結びついていきます。
このスタイルで、同社は旧来の商業印刷における製本の受注を主力としつつも、クリエイターとのコラボレーション、メモ帳に関する案件割合も年々増加させているところです。これらの仕事では、従来の仕事とは異なり、同社が中心となって他社を外注先として仕事を回しながら仕上げていきます。
「何でも相談に応じることが、私の仕事となっていますね」と小林代表は語っています。




PUR製本、そして縦横無尽に広がる製本方法の提案

小林断截では、無線綴じ(丁合の完了した折丁の背に糊を塗布して表紙を貼り付ける製本方法)の場合、3種類の接着剤を使い分け、EVA製本、PUR製本、PO製本などを提案しています。最も一般的で高速安価ですが、やや開きにくいというEVA製本に対して、高価ではあるものの丈夫で開きやすいというPUR製本を小林断截は得意とし、自社の持つ機械で対応することが可能です。
例えば、PUR製本が適しているのは、料理のレシピ本や楽譜など開きながら作業する本。相談者がPUR製本を希望して小林断截に相談に訪れた場合、その書籍の趣旨や利用方法などをヒアリングした結果、PUR製本よりもさらにもっとよく開く製本技術が適していると判断すれば、外注してでも糸かがり綴じ・ハードカバー製本を提案する場合もあります。
「お客さまが創りたいものに、果たして本当にPUR製本が最適なのかを考えます。だから、自社が持つ機械の範囲内の知識だけでは最適な提案はできません。そのためには、紙、そして本に対するあらゆる知識・技術を知っている必要があります」

ディレクターにおける3つのポイント

  • 自分らしさを出さない

    最重視しているのは、自分ではなくて創り手側のイメージを実現すること。打ち合わせ時には、相手の考えを引き出すことに専念します。

  • 関わる全ての人が気持ちのよい 環境づくり

    お客さまとなるクリエイターにとって気持ちの良い仕事の進め方を心がけるのはもちろん、現場のスタッフにとっても作業がやりやすいように、丁寧な段取りに留意します。

  • 印刷会社へのフォロー

    より上質な提案ができるような知識・技術を印刷会社の営業担当者に伝える機会を増やし、普段から良好な関係性を構築します。

ディレクターという立ち位置を継続していく

このように、「ここにしかない製本・紙に関する技術」を提案し、クリエイターのさまざまなニーズに応えることを積み重ねて、旧来の受注製本業から脱出を図りつつある小林断截。実績も数多く積み重ねた今、「いろいろな要望が飛んできます」と小林代表。今後のビジョンについて、明確な方向性を定めているわけではなく、「求められていることに一つずつ丁寧に応えていくことが、結局、社会の役に立つと考えています。製本ディレクターという今のスタイルを今後も続けていきたい」と、小林代表は前を向いています。

取材日:2022年11月1日

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