クマザキコルク株式会社

クマザキコルク

[業種]大分類:製造業 中分類:木材・木製品製造業(家具を除く) 小分類:その他の木製品製造業(竹,とうを含む)

会社紹介 PICKUP特集

卓球ラケットのグリップなどコルク製品のエキスパート工場

コルクを生かし様々な加工製品を作り出す



クマザキコルクは、その名の通りコルク製品の加工製造を行っている会社です。創業は1954年(昭和29年)。現社長・熊崎和彦氏の祖父によってコルク工場がつくられ、以来65年間さまざまなコルク製品を作ってきましたが、昨年4月に、三代目の現社長によって、改めてクマザキコルク株式会社が設立されました。
コルク製品というとすぐ思い浮かぶのはボードやマット、ワインの栓くらいですが、実際には、工業用部品から子ども用玩具までかなり広い場面でコルクが使われています。その中で、同社の製品の柱となっているのが卓球ラケット向けのコルクパーツですが、これ以外にも管楽器のパーツ、射的のコルク玉、理化学ガラス器具のふたなど、分野が異なる各種の製品に実績があります。
同社は、こうしたコルク製品の原材料に、ポルトガルから輸入されたコルクガシの樹皮を使います。コルクガシは地中海性気候でよく育つ大きな常緑樹で、幹の表面はガサガサとして硬いのですが、その下に約4~5センチの厚さの弾力がある組織を備えています。この厚さになるには9年ほどが必要ですが、これを剥いで煮沸し、板状に伸ばして3年くらい乾かしたものが原材料コルクです。計12年、コルク材生産にはそれだけの時間がかかるのです。現在コルクの生産量の第1位はポルトガルで、世界シェアの50%以上を占めています。第2位はスペインで、併せたシェアはほぼ80%になります。



同社はこのポルトガル産のコルクのうち、穴やひびがごく少ない特級品と一級品のみを使います。これは、同社が作る製品に高い品質が求められるものが多くあるため。仕入れた原材料はまだ硬い樹皮が付いたままの板材なので、まずこれを水に濡らして柔らかくし、数日乾かしてから加工に入ります。
さて、同社の中心的製品である卓球ラケットのパーツですが、同社が製造するのはペンホルダー型と呼ぶラケットのグリップ部分と、板のグリップ寄りに張る薄いコルクシートです。厚みのあるペンホルダーのグリップでも、コルク製なら軽くできフィット感も良いのです。グリップ作りでは、乾いたコルク板をグリップの長さに合わせて切り分け、その後幅のサイズと傾斜に合わせて正確にカットし、研磨機でヤスリ掛けしていきます。加工に使う機械はいずれも昭和時代からのもので、今では簡単には手に入りません。使い方の微妙なノウハウも社長だけが身につけたものです。
出来上がったコルクグリップはラケットメーカーの工場へ納品され、さらにメーカーごとの加工がされてラケットに組付けられます。現在国内ラケットメーカーが作るペンホルダーラケットのグリップは、同社がそのほとんどを製造しているそうです。メーカーの厳しい品質要求にこたえて、ほかではできないグリップづくりに追われることもしばしばです。
板に張るシートの方は、コルク板を0.8ミリから1.0ミリまでの薄さにスライスして作ります。スライスする機械は35年前に皮革加工用をコルク用に改造して設置したもので、0.1ミリ以下でのコントロールも社長ならではの技です。





管楽器のコルクパーツでは、フルートの頭部管の中に入っているヘッドコルクや、金管楽器のウォーターキー(つば抜き口)コルクなどを製造します。また、コルク銃を使う射的ゲームが夜店、娯楽施設、催事などで人気が復活し、同社のコルク玉製造への注文も増えています。そのほかビーカー、フラスコなどの理化学ガラス器具のふたも、今はゴム製が主ですが、成分の化学的影響を避けたい時のコルク製ふたへの需要も底堅く、長年同社の製品の1つになっているのです。
天然コルクは以前、自動車をはじめ多様な機械や生活用品に多く使われていましたが、徐々に樹脂製品に取って代わられ、区内に数多くあったコルク加工工場も現在では数えるほどになってきました。しかし、それでも天然コルクでなければ実現できない機能性があり、コルクならではの質感が求められる品々も根強く残っています。クマザキコルクは、そうした市場の期待に応えながら、コルク加工での優れた技術と経験を未来へつなげています。


受け継がれたコルク加工の技術と材料への目利き

  • コルクのスペシャリスト

    コルク製品製造が盛んだった墨田区で1954年に創業し、以来65年を超えてコルク加工の技術と経験を蓄積しているコルクのエキスパートです。

  • 原材料への鋭い目利き

    コルク製品の製造で大きなカギを握るのが材料の良し悪しを見分ける目です。同社は長い経験から目利きに優れ、高品質な製品を生み出しています。

  • 卓球ラケットのコルク部品

    卓球のペンホルダーラケットに使われるコルクグリップが製品の柱です。高い品質への要求に応え、主要なメーカーほとんどに採用されています。

品質の高さを守りお客様の期待に応え続ける

大正の頃から墨田区には大手コルクメーカーの工場があり、そこに勤めて技術を得た職人の中には、独立して区内に自分の加工工場をつくった人も多くいたようです。クマザキコルク社長の熊崎和彦氏の祖父もそうした工場主の一人だったと言います。
その大手メーカーも本社は残したまま、工場はだいぶ以前に近県へと移し、周辺にあった独立工場も別事業に変わったり廃業するなどして、今ではコルク加工専業として活躍するのは同社だけになっています。
「私は二十過ぎから30年以上この仕事をやっていますが、卓球のラケットのパーツ作りを始めたのは先代で、私がまだ子どもの頃でした。今とはけた違いの量を生産していました」
と話すのは熊崎氏です。当時は卓球のラケットと言えばペンホルダーでしたから、同社の工場も大いに活況を呈したのでしょう。その後ラケットの主流はシェイクハンドへと移り、ペンホルダーを使うプレーヤーは日本よりも韓国、台湾で多くなっているようです。同社のコルクグリップが付いたラケットもこの2国で多く販売されています。



「大事にしているのは、品質を守ることです。特に卓球ラケットのメーカーは質への要求が厳しく、常により良いものを求められますから、それに応えることが大事だと思っています」
と、熊崎氏は仕事での基本を述べます。ほかではできない手間のかかる加工を丁寧に行うことで顧客の信頼を得てきました。そこで重要になるのが、加工技術だけでなく材料を見る目だということです。
「この仕事、材料が見られるかどうかなのです。小さな穴の開いているものや、色の具合の悪いものはだめ。良い製品はできません。特級や一級の材料のうちでも、卓球ラケット用に使えるものに限って仕入れているのです」
熊崎氏はそう言って、コルクの目利きでの経験と自信をのぞかせます。とはいえ入ってくる材料の量は限られていて、価格も年々上がっているのが悩みとも言います。材料を確保するのも、仕事のウデのうちだということです。

価値のあるコルク加工の技術を守り続けて行く

同社の工場で製品づくりにあたっているのは社長と女性社員の2人。納期が迫って忙しくなると社長の奥様がお手伝いに入ります。
この数年で射的に使うコルク玉の注文が多くなって、社員の方も加工と検査、出荷作業で忙しそうです。コルク玉は使っているうちに水分を吸って劣化が進み、新しいものに入れ替える需要が大きいのです。輸出も増えているという意外な話もありました。
一方でラケット用パーツのほうは加工に経験が必要で、熊崎氏が一人で頑張っています。



「効率アップが課題ですね。このスライス加工機は先代が特注して造ったもので、今はもうコルク加工の機械を造るところはありません。ノコの機械も木工用のものを改造していますし、刃も木工より鋭くないと使えないので自分で研がないといけません」
と、苦労を話す熊崎氏ですが、コルク製品作りはこれからも続けていく気持ちを固く持っています。
「仕事におもしろみを感じるのは、良い材料が入ってきた時ですね。これなら良いもの作れると張り切るし、頑張りますね(笑)」
少なくなったコルク職人の一人、熊崎氏の目利きと加工の技が活きる仕事に期待する人が多くいます。

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